そしてボランティアの自律的な行動が増えるにつれ、
組織のコンセプトを明確にすること、伝えることの大切さを実感しています。
たとえ「学習サポート」という言葉を掲げていても、
現場で活動するボランティアにとって判断に迷うような場面が生じている。
たとえば、途中から飽きて遊びまわる子どもにどう対処したらいいのか。
子どもを叱ってでも、勉強に引き戻すべきなのか。
あるいは、どこまでが子どもとの関係性を築くためのコミュニケーションで、
どこからが活動の趣旨から外れた遊びとなってしまうのか。
活動のコンセプトを明確にし、そして活動に関わるみんなで共有しなければ、
いずれはそれぞれの捉え方でてんでバラバラに行動し、ひいてはアスイクとは
何のために存在する組織なのかが分からなくなっていくリスクがあります。
今一度明確にしたいことは、次のことです。
避難所での学習サポートという活動において、アスイクが対処するニーズは、
フツウの生活を送る子どもたちと比べて、学習面で遅れたくないという
保護者や子どもの焦りや不安です。
避難所によっては、勉強できる環境でないところが数多くあります。
たとえば、夜の9時に消灯してしまう避難所もあるし、
避難所の中が騒がしくて勉強に集中できないという場合もある。
また、これまで通っていた学習塾に通えなくない状態にある生徒もいるし、
必要な教材などがなくて自分で勉強できない生徒もいる。
そのような状況に対して、できるだけ柔軟に生徒たちの状況に合わせて、
学習面での遅れを最小限にとどめ、彼ら彼女らの進路が閉ざされないように
支援することが、避難所での活動におけるアスイクの提供価値です。
結果的に、生徒たちの張り詰めた気持ちを解きほぐす効果もあるでしょう。
しかし、それはあくまで結果的にであり、そのことだけを目的として
子どもと接するのは、別の専門的な団体の役割であると思います。
今日の石巻での活動でも、ある中学2年生のお祖父さんがのぞきに来て、
こんなことを言ったそうです。
「孫は○○高校に入りたがっていた。だけど、こんな状況なので○○高校には
入れないかもしれないと心配だった」
このような対処すべきニーズと提供すべき価値を踏まえた上で、
サポーターがそれぞれの創意工夫をこらして生徒たちと接し、その試行錯誤の
結果をサポーター同士で共有して欲しいのです。